2009年 11月 21日
日記
テオドール・オーバネル
海のあなたの遥けき国へ
いつも夢路の波枕、
波の枕のなくなくぞ、
こがれ憧れわたるかな、
海のあなたの遥けき国へ。
高校生の時に読んだ詩。訳者は忘れたが、上田敏かもしれない。
交通網のあまり発達していなかった時代では、海岸線に立って海の向こうに深く思いを馳せる人も多かっただろうと思う。
同じ作者の、
小鳥でさえも巣は恋し
まして青空 わが国よ
うまれの里の波羅葦増雲(パライソウ)
というのは、いきなり宗教色が出てきたという感じはするが、なんだかよくわからない。
諸星大二郎の作品で、知恵遅れの人々ばかりの村の中に知恵遅れのキリストやらユダやらがいる話を読んだことがあるが、作者の視点の異様さにかなりの衝撃を受けた。
知恵遅れのキリストが
「みんな!『ぱらいそ』さ行くだ!」「おらと一緒に『ぱらいそ』さ行くだ!」
と叫びつつ天に昇り、村の人々や『いんへるの』に堕ちてウジャウジャとうごめいていた人々も次々と後に続く。
ユダは泣きながら、
「おらも連れてってくだせ。おらも連れてってくだせ」
と叫ぶのだが、裏切り者の彼は昇天の柱に入ることを許してもらえず、ただ一人残される。
物語そのものがうろ覚えなので作者の意図が何だったかよく覚えていないのだが、確か、知恵の遅れた人々の中にも彼らなりのキリストがいてもいいはずだ、というようなものであったと思う。
子供の頃に、豚には豚の、牛には牛の姿をした神様がいてもいいはずだ、と考えたことがあったが、そういうことと似通っているような気がする。
オーバネルの詩からずいぶん話がそれた。
by nekotamamako323
| 2009-11-21 22:42
| なし